臨床発達心理士|JOCDP(一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構)

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臨床発達心理実践研究2019 第14巻 第1号 5-9

臨床発達心理士資格を活かしての開業
――通常学級在籍児童を発達の視点で支援する学びの場「東京都杉並区学齢期発達支援事業委託事業者 インディゴスタディスクエア」

榛谷 都
インディゴスタディスクエア

児童発達支援事業が全国的に展開し,就学前の障害のある子どもや保護者の支援機関,療育施設の数は増加している。しかし,小学校に入学すると児童発達支援事業は幼児の療育の場のため,利用できなくなる。定型発達の子どもたちにも,就学時には「小1プロブレム」といわれる不適応が多く見られる昨今,発達障害を持つ子どもたちの学校適応は,さらに困難になっている。そのような状況の中,東京都杉並区では,小学校低学年の発達障害の子どもたちと保護者の支援を目的に,2017年から「学齢期発達支援事業」をスタートした。当事業所は,2018年より杉並区学齢期発達支援委託事業者として,小学校1年から3年の発達障害児童を支援している。

【キー・ワード】杉並区学齢期発達支援事業,発達障害児支援,保護者支援,学校との連携


臨床発達心理実践研究2019 第14巻 第1号 10-16

被災者支援からコミュニティでの子育て支援への継承
――一般社団法人すくすく広場に託した思い

坂本 佳代子
一般社団法人すくすく広場

被災者支援を開始することは,環境と条件が合えば,後は決断力に負うところが大きいと考える。3年ほど経過する頃から,周囲からは「どのようにボランティア活動を終了していくのか」という問題提起をされるようになった。この報告書は,その大きなテーマに対しての一つの答えである。即ち,支援を終了するのではなく,課題を明確化させながら,新たな活動に転換していくという取り組み方の報告である。新たな活動体は地域コミュニティを意識したものであることにこだわった。一つの活動体を作り出すことはたやすいことではなく,その過程こそが肝要である。よって,この報告書ではそのことに比重を置いている。

【キー・ワード】被災者支援,引き継ぎ,地域課題,コミュニティ,子ども食堂


臨床発達心理実践研究2019 第14巻 第1号 17-22

福祉サービスの実施から障害者防災支援システムの構築へ
――発達障害児・者の生涯発達を支える試み

鈴木 恵美子
NPO法人 発達支援グループ風の子

障害児を持つ親の会から発足し,発達障害児の居場所と継続的な療育場所の確保のためにNPO法人を設立した。現在は,放課後等デイサービス事業と相談支援事業を行っている。また並行して茨城県水戸市内での障害者向け避難訓練の実施や障害者向け災害支援システムの構築を目指している。本報告では,NPO法人発足から障害者防災支援システム作りまでに関して述べる。具体的には,法人設立の時期からインリアルアプローチの手法を取り入れて障害児のデイサービスを充実させた経緯および,相談支援事業を展開することで成人期以降の生涯にわたる発達を支援する取り組みを紹介する。今後の課題として,共生社会の実現に向けた障害者防災支援システムにおける課題を取り上げる。

【キー・ワード】発達障害,児童デイサービス,相談支援事業,インリアルアプローチ,生涯発達支援


臨床発達心理実践研究2019 第14巻 第1号 23-29

臨床発達心理士資格を活かしての開業
――地域ネットワークの中で機能する発達支援

鈴木 弥生
NPO法人風の子会 児童発達支援事業 風の子キッズ

発達障害の早期支援が進む中,就学前幼児の児童発達支援事業が大きく展開されている。ごく早期の発達支援は,「発達障害の疑い」のレベルで開始されるため「子育て支援」の一環として進められる。その段階の一次療育支援は数多くの親子が利用するため,支援の場としての児童発達支援事業のニーズは高い。本稿では一次療育支援機関として展開する児童発達支援事業所の実践を紹介する。そこでは臨床発達心理士の専門性が必要とされていることが認められた。また,事業が地域の発達支援システムの中で機能することの重要性が確認された。一方,小規模事業所の抱える財政面の弱さから,人材の確保に課題があることが指摘された。

【キー・ワード】発達障害,早期支援,児童発達支援事業,一次療育,地域支援システム


臨床発達心理実践研究2019 第14巻 第1号 30-35

NPO法人が進める発達支援事業に関わって

伊藤 良子
NPO法人 子どもと歩む・るみえーる

山本 聡子
NPO法人 子どもと歩む・るみえーる

冨来 秀美
NPO法人 子どもと歩む・るみえーる

石出 晶子
NPO法人 子どもと歩む・るみえーる

河野 智佳子
東京都練馬区保健相談所

クリニック内での親子集団療育に端を発し,NPO法人として指定障害児通所支援事業を開始した経過と事業内容を紹介した。児童発達支援事業の対象児は,自閉スペクトラム症など発達障害のある幼児である。入所当初は保護者と一緒にふれあい遊び等を行い,次第に子どもだけの集団での療育に移行し,学習の基礎に関わる指導やSSTを行っている。保護者からの要望で放課後等デイサービス事業も開始した。筆頭著者は開設当初より関わり,現在はNPO法人の理事長である。また療育プログラムの立案や実施は,他の著者の臨床発達心理士が中心に行っている。今後の課題として,国の報酬単価基準が厳しい中,事業の継続とともに療育の質の向上を図る必要性を指摘した。

【キー・ワード】NPO 法人,児童発達支援事業,放課後等デイサービス事業,親子集団療育,発達障害


臨床発達心理実践研究2019 第14巻 第1号 36-44

小学校における読み書き障害の検査とアセスメント

米田 奈緒子
三重県スクールカウンセラー

渡邉 賢二
皇學館大学

学校現場における読み書き障害の支援方法については,的確なアセスメントを行うことが困難なために支援者は模索を続けている状況である。本研究は会話には違和感がないが学校の読み書きに躓きを抱える児童に対して,音韻聴覚・視覚認知を中心に発達的視点から課題を分析した上でアセスメントを実施し,具体的な療育の方法を提案した。読み書き能力を構成する要素を吟味し,それを測定する検査を選び,結果から課題を指摘して支援を実施してもらい,再アセスメントをするという一連の流れを報告することで読み書き障害に対するアセスメントと支援のあり方を検討する。

【キー・ワード】LD,読み書き障害,特異性発達障害,特別支援教育,アセスメント


臨床発達心理実践研究2019 第14巻 第1号 45-53

児童自立支援施設における生活を通した発達支援システム

大原 天青
国立武蔵野学院

本報告では,児童福祉法第44条に位置づけられた児童自立支援施設における生活を通した発達支援システムについて紹介する。児童自立支援施設は,子ども期の逆境的体験や発達障害等に加えて,非行や問題行動を呈する子どもを入所させ,家庭的な環境と教育・心理的支援を提供することで発達を促す支援体制を持つ。具体的には,アセスメントおよびケースカンファレンスと支援計画の作成,支援の手段としての日課・学習・面接が位置付けられている。また,こうした一連の支援を記録し,評価することを通して,実践と調査および研究をつなげる機能がある。このように実践と調査および研究を循環的につなげることによって,よりよい支援を提供する児童自立支援施設の発達支援システムについて示した。

【キー・ワード】児童自立支援施設,非行と虐待,発達障害,治療教育,生活場面面接


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