臨床発達心理士|JOCDP(一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構)

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臨床発達心理実践研究2018 第13巻 第1号 5-9

若者(高校生・大学生)の実態

都筑 学
中央大学文学部

今の時代を生きる若者(高校生・大学生)の実態について,以下の2つの観点から考察した。第1に,今の大学の特徴について,高校・大学進学率の上昇や高等教育政策の変遷にもとづいて論じた。第2に,大学入学から卒業後までの経済的要因について,家計やアルバイト,奨学金,雇用環境にもとづいて論じた。

【キー・ワード】高校生,大学生,高等教育,進学率,家計,アルバイト,奨学金


臨床発達心理実践研究2018 第13巻 第1号 10-19

「インターネット嗜癖者における治療機関の受診に対する家族の関与の影響

三原 聡子
筑波大学大学院人間総合科学研究科生涯発達専攻

藤 桂
筑波大学人間系

本調査は,久里浜医療センターネット依存専門治療外来を受診したネット嗜癖者本人を対象として,受診に至るまでの理由や経緯を尋ねつつ,その中で家族の関与がどのような影響を及ぼすかについて検討した。その結果,治療機関を受診したネット嗜癖者本人においては,自らのネット嗜癖の現状や将来への認識や自覚は決して低くないこと,さらに,本人も自分だけの力では自らの問題を解決できないと感じていることも多く,周囲からの援助や受診のきっかけを探している可能性も窺われた。さらに数量化Ⅲ類による分析によれば,本人が自らのネット使用について問題に思っている場合は,家族からネット使用のことで受診するように説得された時に受診に結びつくのに対し,本人がネット以外の心や体の問題を認識している場合には,ネットについてではなく,本人の心や体の状態を案ずるような家族の働きかけが,来談に結びつきやすいことが推察された。すなわち,嗜癖者本人が受診に至るまでのきっかけには,家族の関与が大きな役割を果たしており,本人の問題認識に合わせて親が適切に働きかけることが重要であると示唆された。

【キー・ワード】ネット嗜癖,受診理由,問題認識,家族,ネット依存専門治療外来


臨床発達心理実践研究2018 第13巻 第1号 20-23

他者を認めることのできる児童生徒の育成が,いじめの「未然防止」につながる

藤平 敦
国立教育政策研究所生徒指導・進路指導研究センター 総括研究官

児童生徒の「自己有用感」が高まれば,いじめに向かう児童生徒が減るということは,結果的に,いじめが起こりにくい環境になる(=「未然防止」)。「自己有用感」とは,「人の役に立った」,「人に認められた」などと感じることである。人(他者)から認められたと感じる児童生徒を増やすためには,他者を認めることのできる児童生徒を育成することが大切である。そのためには,まず「人の話を聴く」ことを重視すべきである。

【キー・ワード】いじめ,未然防止,自己有用感,社会性,話し合い活動


臨床発達心理実践研究2018 第12巻 第1号 24-34

大学生のキャリア支援

田島 洋介
目白大学

本研究は進路が定まらない大学生に,田島(2011)がASD学生就職支援のために開発した認知行動療法的アプローチを活用し,就職に結びついた事例に基づく実践である。支援過程で認知や行動を促すスクリプクト,可視化,独自教材も活用しゴールを明確にし,学生本来のアイデンティティや,エンパワメントを導き出す2 点に着目し,セッションを展開した。通常は3~6ヶ月,10回程度のセッションで終結する。本事例は2 年次から卒業まで18 ヶ月,計49 回を要したが,中期以降個別支援に切り替えて戦略的なアプローチを行い,徐々に不安を解消することで自信を回復した。今後,大学生の就職支援におけるあり方や環境にも言及し,今後の方策についても論じることとした。

【キー・ワード】就職活動,大学生,認知行動療法,可視化,個別支援


臨床発達心理実践研究2018 第13巻 第1号 35-40

合理的配慮としてのICT利用と学校現場での利用促進における要点

近藤 武夫
東京大学先端科学技術研究センター

障害者差別解消法による権利保障を根拠として,障害のある児童生徒に学校から合理的配慮が提供されることとなり,ICT活用は,教室での学習や試験での合理的配慮を実現する方法のひとつとして選択されるようになった。またその背景には,アクセシビリティ機能の充実やICTの一般化,通常学級での発達障害の理解の拡がりがある。一方で,実践面での課題も残されている。教材と指導法の充実,インターネット等の環境の整備,教室と家庭,進級や進学に向けた移行支援など,ICTを活用した教育実践を円滑化する体制面の整備を行い,障害のある児童生徒の将来の社会参加を最大化することに向けた高度な教育保障が不可欠である。

【キー・ワード】特別支援教育,支援技術,合理的配慮,ICT,学習障害


臨床発達心理実践研究2018 第13巻 第1号 41-46

青少年の自立と貧困の連鎖
――生活保護世帯青少年の高校,大学就学

吉永 純
花園大学

2014年に子どもの貧困対策法が施行され,貧困の連鎖を絶つために様々な施策が実施されている。貧困の連鎖を絶つには,教育の保障が不可欠であるが,大学や短大,専修学校への進学が8 割近くに達しているにもかかわらず,生活保護世帯の子どもたちが大学等で就学すると,生活保護が廃止され,大学等への就学は事実上認められていない。本稿では,生活保護世帯の子どもの高校および大学就学をテーマに,そのような生活保護の運用の妥当性を検討するものである。

【キー・ワード】貧困の連鎖,生活保護,高校就学,大学就学


臨床発達心理実践研究2018 第13巻 第1号 47-51

LGBTへの支援と留意点

梅宮 れいか
福島学院大学

思春期のLGBTの子どもは,それまでに社会化された典型的セクシャリティと,自分の中で沸き上がってくる非典型的セクシャリティとのせめぎ合いの中に生きている。自分自身を異常と思い,著しく低落した自尊感情を抱き,周囲からの偏見や差別を恐れながら,孤独の中で時を過ごしている。 彼ら/ 彼女らへの支援は,支持的で受動的であることが望ましい。支援者は,LGBTについての知識を蓄え,安心して心の中を吐露できる場所を用意し,その在り処を明示しつつ,ひたすら来談を待つ。思春期におけるLGBTの子どもは,非典型的なセクシャリティを認めてくれる他者(支援者)の存在で,アイデンティティの拡散を乗り越え,自己を肯定的に受け入れる素地を作ることができる。

【キー・ワード】LGBT,思春期,セクシャリティ,性同一性,性指向


臨床発達心理実践研究2018 第13巻 第1号 52-59

軽度知的障害のある高校生の学校行事に対するストレス評価の有用性

南 一也
佐賀大学大学院医学系研究科博士課程

本研究の目的は,学校行事への参加を拒否する軽度知的障害のある高校生Aに対して,通常の学習前時と学校行事の活動前時における唾液中の アミラーゼ活性値の測定と心理的評価調査を行い,軽度知的障害のある高校生のストレス評価の有用性と教育的支援の可能性を検証することである。研究の結果, アミラーゼ活性値は学校行事等の活動前に高い数値を示し,軽度知的障害のある高校生の客観的なストレス評価としての有用性が示唆された。さらに,本結果が,Aの集団活動における支援形成の契機となり,簡便かつ非侵襲的な測定可能な アミラーゼ活性値によるストレス評価が,高等学校現場における教育的支援の一つになりうる可能性が示された。

【キー・ワード】軽度知的障害,高校生,学校行事,ストレス評価,唾液αアミラーゼ活性


臨床発達心理実践研究2018 第13巻 第1号 60-68

療育手帳の取得率に関わる要因の検討
――全国の児童相談所における療育手帳判定に関する調査を通じて

吉村 拓馬
社会福祉法人青い鳥 横須賀市療育相談センター

大西 紀子
社会福祉法人青い鳥 横須賀市療育相談センター

惠良 美津子
社会福祉法人青い鳥 横須賀市療育相談センター

松田 裕之
社会福祉法人青い鳥 横須賀市療育相談センター

小橋川 晶子
社会福祉法人青い鳥 横須賀市療育相談センター

広瀬 宏之
社会福祉法人青い鳥 横須賀市療育相談センター

大六 一志
日本臨床発達心理士会茨城支部

【目的】従来,療育手帳制度に関して自治体間の違いが指摘されてきたが,実証的研究はごく少なく,詳細は不明であった。各自治体の現状の把握,手帳の取得率に関わる要因の検討を目的に研究を行った。【方法】全国の児童相談所を対象に質問紙調査を実施した。【結果】集計の結果,判定に用いられる検査の規定や実施状況,判定基準等は自治体間で大きく異なっていた。また,人口などの統計指標や制度の整備状況が取得率の高低に関連していた。【考察】制度に関する自治体間の違いが,取得率の差の背景になっている可能性が示唆された。当事者の不利益や不平等につながり得るものであり,制度自体の抜本的な見直しが必要である。

【キー・ワード】障害認定,障害者手帳,知能検査・発達検査,知的発達障害


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