臨床発達心理士|JOCDP(一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構)

LANGUAGE

メニュー

臨床発達心理実践研究2017 第12巻 第2号 85-92

障害幼児の発達支援におけるコンサルテーションの実践研究
――自閉スペクトラム症の事例を通して

内藤 綾子
鳥取市こども発達・家庭支援センター

田丸 尚美
広島都市学園大学

別府 悦子
中部学院大学

自閉スペクトラム症の幼児について,心理士がアセスメントおよび行動観察をもとにした療育へのコンサルテーションを行うなかで良好な変化を見出した事例の報告を行う。集団に参加できず,泣くと止まらないなどの行動上の困難があったが,3年間の療育の中での変化を見出した事例である。その背景には,心理士が療育場面における児の姿を観察,その後療育者と観察記録を共有するという定期的なカンファランスを行うことで,ともに本児を発達的に理解し,課題であった1歳半の節の葛藤や揺れを保障する療育が可能となったことが重要であった。ここから,心理士のアセスメントとコンサルテーションの意義が示唆された。

【キー・ワード】自閉スペクトラム症,発達検査,アセスメント,コンサルテーション


臨床発達心理実践研究2017 第12巻 第2号 93-102

「他者からの関わり」に拒否を示し主体的な活動参加が困難なASD幼児への支援
――環境調整と共に関係性に着目したグループ療育を通じて

結城 綾
社会福祉法人 正夢の会

本稿は,他者からの接近及び直接的関わりを受けると嘔吐や自傷,他害などの問題行動による拒否を示すために,療育活動への主体的な参加が難しい発達的遅れを伴う自閉症スペクトラム幼児に対して,年長時でのグループ療育を軸に支援したものである。 本事例では,対象児が自身の意思を尊重され安心感を持つことが可能な環境調整を行うと共に, 関わり手と受け手との関係性の問題としてアプローチすることで,結果的に直接的な働きかけを受け入れることが可能となった。特に対象児と信頼関係をどのように構築するかという観点による支援が重要であり,相手の反応を試す行動を通して相手の意図への気づきが促されることが経過から示唆された。

【キー・ワード】問題行動,安心感,環境調整,信頼関係,意図への気づき


臨床発達心理実践研究2017 第12巻 第2号 103-112

極・超低出生体重で出生した児童の知的発達の経過,学習習得についての検討

伊藤 淳一
北海道社会福祉事業団 太陽の園発達診療相談室

小学校の就学前の評価で,年齢相当の知的発達と判断された極・超低出生体重(1500g未満)で出生した既往がある14事例を対象として,幼児期の身体発育,知的発達の経過や学習習得について検討した。就学時に,明らかな発育不全や痙性麻痺等の身体所見のない事例であっても,知的発達の特性について留意する必要がある。幼児期から認知特性の差が内在している場合,就学後には言語・非言語的な発達の差異を呈することにつながる。高学年になるにつれて学習習得の困難性を呈した場合,学習障害(限局性学習症)としての教育対応を要する。さらに思春期以降には,社会的な適応能力や精神症状の有無についても確認を継続していく必要がある。

【キー・ワード】極・超低出生体重児,身体発育,知的発達,学習障害(限局性学習症)


臨床発達心理実践研究2017 第12巻 第2号 113-119

知的障害が疑われる生徒に対する意思決定の支援
――「話し合い表」による指導効果の検証

中内 麻美
星美学園短期大学

竹森 亜美
立教大学心理芸術人文学研究所

福田 惇総
立教大学現代心理学部

大石 幸二
立教大学現代心理学部

本研究は,知的障害が疑われる生徒1名を対象に,「話し合い表」により周囲の情報を視覚化することで,話し合い直後のゲーム活動においても他者の状況をふまえた発話が促進されると仮説を立て指導効果を検証した。介入では,ゲーム活動の前に話し合いの機会を持ち,周囲の情報を「話し合い表」で視覚的に示した。その結果,ゲーム活動中の自発的な発話が増加し,発話内容については「他者の状況」と「観察反応」に関する発話が促進された。以上の結果から,明示化・対象化された情報は,自己調節を促進することが示唆された。今後,より広範な対人場面において支援効果を検証することを課題とした。

【キー・ワード】知的障害,意思決定,話し合い表


閉じる