臨床発達心理士|JOCDP(一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構)

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臨床発達心理実践研究2017 第12巻 第1号 5-9

発達論的アプローチから見るペアレント・トレーニング

近藤 清美
帝京大学文学部心理学科

臨床発達心理学的支援は発達的観点から行われるべきものである。本論文では,基本となる発達理論を取り上げ,発達的観点を明らかにした。また,子どもの発達に関わる親の役割について論じ,親に対する多様な支援の在り方を示した。さらに,本来は行動論的アプローチに基づくペアレント・トレーニングについて,発達論的アプローチの枠組みで捉える可能性について論じた。

【キー・ワード】発達的観点,発達論的アプローチ,親支援,ペアレント・トレーニング


臨床発達心理実践研究2017 第12巻 第1号 10-16

社会的コミュニケーション発達を促すペアレントプログラムの開発と検証

尾崎 康子
相模女子大学人間社会学部人間心理学科

ASD幼児の親が子どもへの対応を学ぶ「社会的コミュニケーション発達を促すペアレントプログラム」を開発した。プログラムは,5名前後の親グループで全7回行うものであり,家庭において親子の情動共有を伴う社会相互作用を重ねていくことを目指している。本プログラムを受講した母親に事前事後調査を行ったところ,行動的側面であるアタッチメント行動が増えるだけでなく,情動的側面である情動的な繋がりや遊び場面での情動共有が増えることが分かり,本プログラムの一定の効果が認められた。

【キー・ワード】ASD,ペアレントプログラム,社会的認知,社会的相互作用,情動共有


臨床発達心理実践研究2017 第12巻 第1号 17-22

JASPERとペアレント・プログラム

黒田 美保
名古屋学芸大学

浜田 恵
浜松医科大学

辻井 正次
中京大学

発達障害の早期支援において,子ども自身への支援と親への支援は,ともに不可欠なものである。また,現在の早期支援の流れとして,療育施設や病院で行われる支援ではなく,コミュニティーの中で行われる支援,つまりインクルージョンに関心が集まっている。こうしたコミュニティーベースの支援として,子ども自身への支援としてJASPER(カルフォルニア大学で開発された療育方法で,遊びの中で対人コミュニケーションの力を育てていくもの)と親支援であるペアレント・プログラム(親 の子どもへの認知を変えることで子育て方法を改善していくプログラム)をとりあげ,この2つの可能性と今後の早期支援の方向性を考えた。

【キー・ワード】JASPER,ペアレント・プログラム,発達障害,早期支援,インクルージョン


臨床発達心理実践研究2017 第12巻 第1号 23-29

TEACCHプログラムにおける早期ペアレント支援
――Family Implemented TEACCH for Toddlers(FITT)の特徴と意義

三宅 篤子
東京経営短期大学子ども教育学科

アメリカ,ノースカロライナ大学医学部TEACCH 部は,自閉スペクトラム症児の早期支援プログラムとしてFamily Implemented TEACCH for Toddlers(FITT)を開発した。これまでの様々なプログラムと異なって,FITTではプログラムを開発したのち効果検証が行われた。その結果を受けて2017年2月からはプログラム普及のための研修会が開始されている。今回はこの研修会へ参加した結果及びその他の文献をもとに,FITTの特徴とその意義を検討する。

【キー・ワード】早期自閉スペクトラム症児支援,Family Implemented TEACCH for Toddlers(FITT),構造化の要素の早期化,親のストレス軽減,親コーチングシステム


臨床発達心理実践研究2017 第12巻 第1号 30-34

応用行動分析,認知行動療法とペアレント・トレーニング

立元 真
宮崎大学大学院教育学研究科

本稿では,PTの各種のプログラムを,1. 応用行動分析との関係性からの視点,2. 個別介入と集団介入という介入形式のバリエーションの視点,3. ペアレント・トレーニングとペアレント・プログラムとの差異,4. 認知行動療法の内容を組み込んだプログラム構成の視点,5. エビデンスに基づいた普及展開に向けた視点,といった5つの視点から概観した。認知行動療法の内容を組み込むなどプログラムそのものが発展していく一方で,今後,行政による合理的な支援を得て普及を図っていくためには,臨床発達心理士が行政に対して各プログラムのエビデンスを説明していくことが鍵になっていくだろう。

【キー・ワード】ペアレント・トレーニング(PT),行動原理,認知行動療法,ペアレント・プログラム,エビデンス


臨床発達心理実践研究2017 第12巻 第1号 35-39

ADHDのペアレント・トレーニング

井澗 知美
大正大学

ADHDは不注意,多動,衝動性といった基本症状をもち,それらが日常生活の機能に影響を及ぼす。ADHDの診断・治療ガイドラインによれば,治療にあたっては薬物療法よりもまずは心理社会的治療から開始するように推奨されている。ペアレント・トレーニングは心理社会的治療法のひとつである。ペアレント・トレーニングにより,保護者の認知と行動の変容が起こり,子どもの問題行動の改善や親の養育スキルの改善,親のメンタルヘルスの改善がみとめられる。わが国ではこの20年間で全国に普及しているが,有効性の検討については今後の課題である。

【キー・ワード】ADHD,心理社会的治療,行動変容理論,ポジティブな注目,小さな成功


臨床発達心理実践研究2017 第12巻 第1号 40-44

発達障害に対するペアレント・トレーニングの動向と課題

井上 雅彦
鳥取大学医学系研究科

発達障害における家族支援プログラムとして,ペアレント・トレーニングが注目されている。ペアレント・トレーニングは親の養育行動の変容を通して子どもの行動変容を目指した行動理論に基づく心理教育的プログラムの総称であり,親の抑うつやストレスなどの心理面の改善,適切な養育行動の獲得と子どもの発達促進や問題行動の改善がその効果として示されてきている。一方,ペアレント・トレーニングには,その発展経緯から,障害種やニーズにより様々な形態やバリエーションが存在している。地域への普及のためには,障害に特化しない汎用的なプログラムの開発,父親の参加,短縮版や思春期版の開発,基本プラットホームの確定と支援者養成プログラムの整備,プログラム後のフォローアップと連携システムなどについてさらなる検討が必要となる。

【キー・ワード】家族支援,ペアレント・トレーニング,地域への普及


臨床発達心理実践研究2017 第12巻 第1号 45-51

自閉症スペクトラム障害児同士の協同活動場面における相互交渉
――指導経過を通してみる言語による働きかけと応答の変化を中心に

上村 誠也
NPO 法人正讃会

小野里 美帆
相談支援かみひこうき 文教大学教育学部

2名の自閉症スペクトラム障害児を対象に,「机を運ぶ」という協同活動の成立を目的として,ルーティン場面を設定し,指導を行った。指導目標とした言語による働きかけに加え,指導目標以外の発話や働きかけが生起した。背景として,以下の2点が効果的に作用した可能性がある。1点は,相手への働きかけの内容が「目的地に机を一緒に運ぶ」という目的や方法が明確である具体的で単純な行為であったことであり,もう1点は,働きかけに対する結果の成否が「働きかけに対し,机を運ぶか運ばないか」という具体的な他者の行為によって明示的に示されたことである。

【キー・ワード】協同活動,自閉症スペクトラム障害,子ども同士,ルーティン,指導


臨床発達心理実践研究2017 第12巻 第1号 52-63

余命宣告を受けた老年期のクライアントが作業療法を通して「自分らしく生ききること」を決意するまでの11ヵ月間の軌跡
――TEM(複線径路・等至性モデル)による分析の試み

今西 美由紀
大阪府立大学大学院総合リハビリテーション学研究科

友久 久雄
京都大学医学部付属病院

日垣 一男
大阪府立大学地域保健学域総合リハビリテーション学類作業療法学専攻

余命宣告を受けた老年期のクライアントが,作業療法を通して「自分らしく生ききること」を決意するまでのプロセスを,複線径路・等至性モデル(TEM)を用いて分析を行った。その結果,「死を否認する時期」「死について考え始める時期」「死を受容する時期」「自分らしく生ききることを決意する時期」というプロセスを描けることが分かった。作業療法はADLの改善に向けた訓練を通してクライアントとの「協働」によって展開される一連の治療プロセスである。また「クライアント中心の作業療法」による支援はクライアント自身に元来内在する自己成長の機会を発現させ,心理・社会的発達の遂行を促進させる。作業療法による支援は,終末期におけるクライアントに対しても,自己成長の一助となり得ることを,本事例を通して明らかにすることができた。

【キー・ワード】老年期,死の受容,QOL,作業療法,複線径路・等至性モデル(TEM)


臨床発達心理実践研究2017 第12巻 第1号 64-74

学校コンサルテーションにおける教師の課題解決のファシリテーション技法に関する実践的研究

森 正樹
埼玉県立大学

特別支援教育に関する,小学校の教師集団の課題解決を促進する目的でコンサルテーションを行った。カンファレンスにて,教師の主体性の尊重,相互作用と検討プロセスの促進に主眼を置いた支援を継続した。その経過で教師の提案件数は増加し,より教師のイニシアチブが増大した。これを踏まえ,教師の主体的な課題解決に資するファシリテーションについて,①同僚間の情報共有と情報交流,②教師の課題解決力に即した方略と立脚点の調整,③効果的な発問の技術,④教師が自らの協働性をモニタリングする観点の提供,⑤教師の課題意識の意識化・言語化,⑥専門性の共有とシステム化,⑦教師に,人的資源としての価値と潜在的可能性への自覚を促すことの重要性を提言した。

【キー・ワード】学校コンサルテーション,カンファレンス,ファシリテーション


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