臨床発達心理士|JOCDP(一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構)

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臨床発達心理実践研究2016 第11巻 第1号 5-9

発達障害のある当事者視点からみた運動発達上の困難さ
――「不器用さ」とともに生きる

笹森 理絵
フリーランス/精神保健福祉士等

本稿は,身体的不器用さを主訴とする発達障害である発達性協調運動障害を有する当事者である著者が,発達的時系列に沿って,その時期ごとに発生した出来事とそれに対する心情を叙述した。その内容をもとに,こうした障害を有する者の運動発達上の困難さがもたらす生活上の生きづらさの特徴の理解と,今後の運動発達に関連する支援のあり方や臨床研究の一資料になることを目的としたものである。

【キー・ワード】発達性協調運動障害,不器用,自尊心の低下,自己効力感,原因を知ること


臨床発達心理実践研究2016 第11巻 第1号 10-14

運動発達をどうみるのか
――研究の転換と支援の可能

七木田 敦
広島大学大学院教育学研究科

発達障害を中心とした「運動発達上の困難さ」について,当事者主体に立った事例の積み上げがないので,運動発達支援のための研究や支援モデルがはたして停滞しているのだろうか。本論では,1940年代に基礎づけられた「運動発達支援」の古典的な研究にいまだに基礎づけられている教科書的なイメージを払拭するために,注目すべき発達論のいくつかにふれる。これを踏まえ,生得的な要因に基づいて,段階的に生じるという従来の運動発達観ではとらえきれないような環境要因下にある障害のある子どもの運動発達について,“ヒトが生きられるリアルな動的時間”という枠の中でとらえる必要があることを述べる。

【キー・ワード】運動発達,運動スキル,ダイナミックシステム,発達の非平衡性


臨床発達心理実践研究2016 第11巻 第1号 15-20

保育場面における「気になる」子どもの運動発達上の困難さとその支援

増田 貴人
弘前大学教育学部

運動面で「気になる」子どもは,集団を乱す問題にはなりにくく,その多くが生活体験不足に偏重して認識されがちである。しかしDCD(発達性協調運動症:Developmental Coordination Disorder)をはじめとする発達障害の可能性もあり,また周囲の大人たちが,単に何度も練習させ「できるように」働きかけたとしても,本人の自ら取り組んでみようとする意欲に働きかけていなければ,子どもに自らの下手さを自覚させ苦痛を繰り返すにすぎず,情緒的幸福感や自己概念の低下を招きかねない。運動面の「気になる」子どもに対して,仲間たちとの遊びの楽しさを実感できるような環境設定の工夫が,さらに重要になってくると思われる。

【キー・ワード】運動面で「気になる」子ども,保育者の認識,情緒的幸福感,仲間関係


臨床発達心理実践研究2016 第11巻 第1号 21-26

学齢期における発達障害のある子どもの運動発達上の困難さとその支援

澤江 幸則
筑波大学体育系

村上 祐介
金沢医科大学

本研究は,学齢期の発達障害のある子どもの運動発達上の困難さとその支援を検討するため,発達支援を受けている発達障害のある児童生徒5 名を対象に,運動有能感と,それに影響すると考えられる運動発達状態と運動実施状況について調査した。その結果,仮説として,運動有能感は,運動面の発達状態が直接影響しているわけではなく,運動実施状況と関連しながら影響していることが確認できた。この発達特性から,支援において,単に運動面の発達的改善だけを求めるのではなく,日常的な行動化を想定した支援の必要性を示すことができた。一方,本研究で示された学齢期における運動発達特徴についての仮説は検証されなければならないと考えた。

【キー・ワード】学齢期,発達障害,運動有能感,協調運動,運動実施状況


臨床発達心理実践研究2016 第11巻 第1号 27-31

青年期以降の自閉症スペクトラム障害者の余暇場面における困難さとその支援
――運動やスポーツに対する価値観に着目して

杉山 文乃
筑波大学体育科学専攻

本研究は,青年期以降の自閉症スペクトラム障害(以下,ASD)のある人の生涯スポーツ実践に必要な支援の方法を検討するために,運動やスポーツに対する価値観とその要因を明らかにすることを目的とし,ASDのある成人10名を対象に,アンケート調査と半構造化面接による調査を行った。その結果,本研究の対象者は,個人差はあるものの,限定的な価値観を持っていることが明らかとなり,その要因として,個人的要因と環境的要因の大きく分けて二つの要因が影響していることが示唆された。

【キー・ワード】ASD,余暇,生涯スポーツ,価値観


臨床発達心理実践研究2016 第11巻 第1号 32-36

運動発達の基礎研究は発達支援に対してどのような意義を持つのか?

山本 尚樹
立教大学現代心理学部

運動面の困難さに向けた発達支援に,運動発達研究の基礎研究がどのような意義を持つのか,基礎研究の理論や研究事例を紹介しつつ考察した。まずは,基礎研究において提示されている理論枠組みを紹介し,運動発達研究が全人的(holistic)なアプローチを含意していることを確認した。その上で,運動発達が知覚,認知など他の発達領域と関連していること,その支援上の可能性などを指摘した。また,運動の個人特性や,それによる多様性に焦点をあてた研究事例を紹介し,発達の多様な経路を考慮に入れた支援の可能性や,個人の運動特性と運動課題の制約との関係性について考察を行った。

【キー・ワード】基礎研究,全人的アプローチ,個人の運動特性,発達経路の多様性


臨床発達心理実践研究2016 第11巻 第1号 37-45

行動療法を活用した不登校改善の試み

小野 學
筑波大学心理・発達教育相談室

大学相談室を訪れた小学生の女児に行動療法を活用した支援を実施し,不登校状態を改善したものである。不安階層表による主観的不安尺度を用いて,不安強度を測定した上で現実的脱感作法を適用し,不安の低い場面から高い場面へ段階的に登校活動を形成した。また主張訓練法を適用し,友人関係が円滑に展開するための会話スキルを形成した。支援する際は在籍校と保護者,相談室が連携し,在籍校では登校支援チームを結成し登校支援にあたり,さらに担任はクラス内での嫌悪事態の軽減と会話促進を目標として強化のネットワークの形成を図った。また家庭ではトークンシステムを活用して登校行動を強化した。

【キー・ワード】不登校児,行動療法,現実的脱感作法,連携


臨床発達心理実践研究2016 第11巻 第1号 46-54

大学における発達障害学生支援に携わる教職員の実態調査
――教職員支援のあり方と担当者の役割についての検討

森脇 愛子
東京学芸大学障がい学生支援室

奥住 秀之
東京学芸大学特別支援科学講座

藤野 博
東京学芸大学特別支援科学講座

大学に在籍する発達障害学生数は年々増加しており,学内の支援体制整備は喫緊の課題である。学生に関わる全ての教職員の理解・連携が重要視されているものの,発達障害特性の理解や対応は個別性が高く一般の教職員には困難さや負担感が伴う場合がある。本研究では全国の大学を対象に調査を行い,発達障害学生支援に携わる教職員の実態と課題を明らかにした。その結果,発達障害学生に対する教職員の時間的・心理的な負担感や特定の教職員に過重な負担があるという現状,また教職員間の相談・連携のバリアとなる複数の課題があることが示された。現在の大学等では障害学生本人への支援は拡充しつつあるが,それと同時に教職員のエンパワメントやメンタルヘルスの向上,相談・連携の促進といった“支援者支援”の視点を含む学内体制整備が必要である。各大学の特色や既存体制を生かした持続可能で健全な支援システム実現のための課題検討や,障害学生支援担当者に期待される役割・機能についての議論が,今後望まれるところである。

【キー・ワード】大学,発達障害,支援体制,学生支援,教職員支援


臨床発達心理実践研究2016 第11巻 第1号 55-62

臨床発達心理士の専門性向上におけるスーパービジョン
――よりよいスーパービジョンを実施するための基礎的文献検討

藤崎 春代
昭和女子大学

臨床発達心理士の専門性向上の取り組みの一つとして,スーパービジョンに着目し,スーパービジョンについての先行研究を概観して,その特徴と機能,形態と方法,とらえる枠組み(モデル)について整理した。さらに先行研究に基づいて,スーパーバイザーの資質とスーパービジョンを行う際の留意点について整理・検討した結果,スーパーバイザーになることは容易なことではなく,スーパーバイザーとしての発達過程や養成プログラムの検討が必要であることが示唆された。また,伝統的スーパービジョンの枠組みを超えた臨床発達心理士の専門職ネットワークの重要性についても考察した。

【キー・ワード】スーパービジョン,スーパーバイザー,専門性向上,専門職ネットワーク,臨床発達心理士


臨床発達心理実践研究2016 第11巻 第1号 63-75

巡回発達相談のシステム開発を支援する行政との組織コンサルテーション

木原 久美子
帝京大学

本研究は,24年にわたり外部の嘱託の発達相談員として取り組んだインクルーシブ保育を支援する巡回発達相談を,巡回発達相談のシステム(事業制度)に関する行政との組織コンサルテーションとして振り返り,システム開発に寄与する組織コンサルテーションの実践についての示唆を得ることを目的とした。システムに大きな変更が生じた時期を区切りとした結果,巡回発達相談のシステム開発は3期に区分されることが分かった。この間の組織コンサルテーションの分析から,第1・第2期は発達相談員の課題意識に基づいたシステム構築の時期であり,このシステムを資源として行政が政策実現を図ったのが第3 期であると考えられた。検討された相談活動のポイントに基づき,外部の嘱託の発達相談員の立場で行政に対し巡回発達相談システムに関する組織コンサルテーションを実践する際のモデルと留意点が導かれた。

【キー・ワード】組織コンサルテーション,インクルーシブ保育,巡回発達相談,システム開発,行政


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