臨床発達心理士|JOCDP(一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構)

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臨床発達心理実践研究2014 第9巻 第2号 71-79

発巡回相談が広汎性発達障害の疑いがある幼児の保育園入園直後の支援に及ぼす影響

藤岡 順子
くさのみ福祉会

倉盛 美穂子
鈴峯女子短期大学

本研究は,広汎性発達障害の疑いのある幼児3名を対象に,入園前の行動観察記録や発達検査から明らかになった個々の発達課題を軸にして,入園後に短期縦断的に巡回相談を行うことが,保育者や子どもへの有効な支援となることを検証したものである。巡回相談員が一貫して,対象児の発達課題を解決糸口にしていたことは,保育者が対象児支援のポイントを把握し,保育の見通しをもつことにつながったと思われる。また,各子どもの抱える問題を重大化しないという点において,子どもたちにも効果があったと思われる。

【キー・ワード】巡回相談,入園,集団適応,広汎性発達障害の疑い


臨床発達心理実践研究2014 第9巻 第2号 80-87

知的障害を伴う自閉症児における参照的注視に関する研究
――カード分類課題における条件性弁別の適用

渡辺 孝継
共立女子大学 非常勤講師

大石 幸二
立教大学現代心理学部

本研究では,1名の知的障害を伴う自閉症児が,他者の視線方向(“左”か“右”)と言語教示された表情名(“笑う”か“泣く”)を条件性弁別することが可能かどうかについて検証した。具体的には,机上でのカード分類場面において,左右に2つずつ配置された4つのカゴ(左右を“対”にして配置)の何れかに白紙のカードを分類することが求められた。研究開始当初,対象児は表情名のみを参考にカード分類を行っていた。しかし,刺激の提示順を変更し分化的に結果操作を行った結果,正確にカード分類を行うことが可能になった。結果を条件性弁別の枠組みの有効性という観点から考察し,指導場面で過剰な言語教示を抑制できる臨床的意義を指摘した。

【キー・ワード】知的障害を伴う自閉症児,他者の視線方向,条件性弁別


臨床発達心理実践研究2014 第9巻 第2号 88-95

ASD児の自己コントロールにかかわる支援

望月 純子
特定非営利活動法人発達障害児応援団NPOばく

今泉 依子
特定非営利活動法人発達障害児応援団NPOばく

渡邉 静代
特定非営利活動法人発達障害児応援団NPOばく

牧田 百代
特定非営利活動法人発達障害児応援団NPOばく

入し,情動の変化の過程を共に整理し,意味づけることを積み重ねた。さらに,対象児の想像力の弱さを補うために,認知と情動,行動のつながりを視覚的に教える指導を行った。本報告では,対象児が他者の意見を受け入れ,怒りを他の行動に切り替えていく過程について,①筆者との関係,②対象児の認知と情動調整の関係の視点で検討した。

【キー・ワード】ASD,怒りのコントロール,認知―情動―行動のつながり


臨床発達心理実践研究2014 第9巻 第2号 96-105

授業不参加行動を示す発達障害児に対する授業参加を促す取り組みについて

新井 豊吉
東京都立あきる野学園

本研究は知的障害特別支援学校において授業に参加できず,器物破損や徘徊等を繰り返す知的な遅れが軽度な生徒に対する行動改善を試みた事例研究である。先行研究と対象者のエピソードから居場所作り・乗り越えられる課題の設定・ルールに基づいた教員とのやり取りを通して,互いの合意のもとに授業を抜け,再び戻るという支援方法を設定した。これらの支援方法は授業に参加しないことを助長させることはなく,徘徊や暴力的な行為を減少させる結果となった。また家庭・医療・地域の心理士・学校の連携が不可欠であり,とりわけ教員集団による障害特性の共通理解が基本となることが確認された。

【キー・ワード】授業不参加行動,発達障害児,合意,居場所作り,障害特性の理解


臨床発達心理実践研究2014 第9巻 第2号 106-112

視覚障害を伴う重症心身障害児(者)の実態及び療育担当職の生活環境支援に関する調査研究

中村 友亮
国立病院機構新潟病院 療育指導室

本稿は,施設入所(院)し,療育に関わる個人記録にて視覚障害を指摘されている大島分類1~4の重症心身障害児(者)について,療育担当職が把握する実態及び療育担当職の生活環境支援における行動特徴を明らかにすることを目的とした調査研究である。結果,大島分類1~4の重症心身障害児(者)の約2割が視覚障害を指摘されていることが明らかとなった。また,生活環境支援に関する自由記述の回答に内容分析を用いた結果,12カテゴリが形成され,療育担当職の生活環境支援は4側面の特徴があることが明らかとなった。考察より,調査・実践研究の蓄積及び視覚障害を伴う重複障害に関する知見のさらなる収集の必要性が示唆された。

【キー・ワード】重症心身障害,視覚障害,生活環境支援,内容分析


臨床発達心理実践研究2014 第9巻 第2号 113-119

重度知的障害のある自閉症者の行動障害に対する発達臨床コンサルテーションの効果
――入所施設職員へのコミュニケーション支援を中心に

別府 悦子
中部学院大学子ども学部

別府 哲
岐阜大学教育学部

激しい行動障害を現した重度知的障害のある自閉症者の事例をもとにしたコンサルテーションの実践報告を行った。本事例はこだわりや同一性保持が強く,破壊行動が頻発したり,他者を巻き込んでトラブルになるなどにより入所施設で対応困難を抱えていた。事例に対しての発達検査をもとにしたアセスメントを通して,発達を機能連関的にとらえた発達臨床コンサルテーションを行ったことで,職員との共通理解が築かれ,それをもとに事例の行動障害の減少,および適応行動が増えていく変化につながった。このことから,行動障害への対応策の一助となる発達臨床コンサルテーションの有効性とそのあり方を提示した。

【キー・ワード】自閉症,重度知的障害,コンサルテーション,機能連関


臨床発達心理実践研究2014 第9巻 第2号 120-125

場と人と時間をつなぐ支援をめざして
――臨床発達心理士会埼玉支部福島原発避難者支援活動報告

須藤 幸恵
埼玉県立所沢おおぞら特別支援学校

金谷 京子
聖学院大学

和田 香誉
埼玉県立大学

坂本 佳代子
坂本福祉事務所

吉池 望
埼玉県立越谷特別支援学校

請川 滋大
日本女子大学

澤江 幸則
筑波大学

高橋 一公
東京未来大学

増田 忠男
埼玉県立騎西特別支援学校

増子 幸子
埼玉県立騎西特別支援学校

新島 芳子
さいたま市立大田小学校

本報告は,埼玉支部で取り組んでいる「福島原発事故避難者支援」の2012年度の活動をまとめたものである。原発事故直後から取り組んできた「Kぴえろの遊び広場」に加え,旧K高校避難所から移動した子ども達が多く住むI市での「Iぴえろの遊び広場」での活動を通して,2年続けてきた「ぴえろの遊び広場」に参加した子ども達の,遊び方や集団への関わり方,対する大人への関わり方などの変容について報告する。またM市での相談・療育支援活動を通して,原発事故から2年が経過して新たに見えてきた被災地の療育の問題について報告する。3か所の支援活動から息の長い支援をすることの意義を考察する。

【キー・ワード】原発事故避難者,つなぐ,長期的支援,表現する,心のケア


臨床発達心理実践研究2014 第9巻 第2号 126-134

高等学校教職員による特別支援教育の主体的課題解決を促進する学校コンサルテーションの技法に関する実践的研究

森 正樹
埼玉県立大学保健医療福祉学部

特別な支援を要する生徒に関する諸課題を,高等学校の教職員集団が主体的・自立的に解決するプロセスの支援を目的に,特別支援教育巡回相談を3か年実施した。巡回相談員はカンファレンスに積極的に関与し,巡回相談の活用ガイダンス,個別の指導計画作成の支援,教職員間の相互作用のファシリテーションを行った。その経過で教職員集団は,自身の授業改善に関連付けて特別支援を発想・提案するに至った。これらを踏まえ,教育現場をエンパワメントするコンサルテーションの視座として,①支援仮説形成のための情報活用支援,②協働における役割・立脚点の明示と調整,③知的相互作用を通じた課題解決の実体験,④教職員の専門性に根ざした検討プロセスの共有の重要性を提起した。

【キー・ワード】特別支援教育巡回相談,学校コンサルテーション,カンファレンス

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